【秋田 vs 相模原】退任する間瀬秀一監督がクラブにもたらした「秋田らしさ」

2019年12月7日(土)


ブラウブリッツ秋田は2019年11月29日、間瀬秀一監督(写真)の退任を発表した。目標だったJ2昇格を果たせず、その責任を負う形となった。

今シーズンの秋田の歩みを振り返ると、序盤で苦んだ前半戦は5勝5分7敗(勝点20、得点16、失点20)。開幕当初のシステムは昨季後半から継続する[4-1-4-1]のシステムで、最終ラインからビルドアップしてボールを保持し、攻撃に人数をかけようとした。しかし相手にシステム上の急所を突かれてカウンターを浴び、あるいは悪い形でボールを失いピンチを招く。ミスがミスを呼んで流れが悪くなり勝点を取りこぼすこともあった。何よりも結果が出ず、チームが自信を失いかけていたことは想像に難くない。

間瀬監督は第11節から、かつて自らが秋田に取り入れた[3-4-2-1]を採用。システムの変更に伴い、プレーも整理された。それまで積み上げてきたビルドアップに加えて、前線へのロングボールやサイドチェンジを使うプレーも織り交ぜた。前線から積極的にボールを奪いに行き、奪ったら素早くカウンターに移る。サイドの選手はクロスを入れ、中央の選手はそれに詰めて攻め切るようにする。ピッチでは誰もが球際で泥臭く体を張るなど、チームの強みがシンプルに伝わるようになっていた。「チームがひとつの方向に向かってやれている。そのぶん、みんなもやりやすいのでは」とキャプテンの山田尚幸は言う。後半戦だけで5得点を挙げている林容平は「チームの能力が上がり、チャンスを作れるようになった」という。結果が出てきたことで、全体が「ある程度のミスはしかたない」と割り切れるようになったのも大きいだろう。

システム変更ですぐに勝ち星は増えなかったが少しずつ失点が減り、守備の安定とともに得点も増えた。後半戦は最終節を残し8勝4分4敗(勝点28、得点29、失点15)と持ち直しに成功している。

リーグ終盤になって秋田のサッカーはよりアグレッシブになり、その勢いはJ2昇格が絶たれても変わらず、来季への可能性も感じられる内容になっていた。その矢先の退任発表だった。間瀬監督は「J2昇格の年に昇格ができなかった。それを私自身が一番受け止めるべきです」と述べている。

新人監督として秋田を率いた2015~2016シーズン。そして2018シーズン後半~2019シーズンの計3年半。間瀬監督のサッカーには「流動性」「相手を見る」「選手だけでなく、見ている人も誇りや喜びを感じるプレー」などの要素が挙げられる。しかしこれらは原則であり、原則を成り立たせるための原理があるように思う。それを監督自身の言葉から探ってみたい。

就任1年目を経た2016シーズンの新体制発表記者会見で間瀬監督は、新加入する選手たちについて次のように語っていた。「うまい下手の前にやはり戦えるということ。そして、戦える戦えないの前にサッカーというスポーツ、それ以上に自分の人生に真剣に向き合えているかどうかを重視しています」

間瀬監督が志向するサッカーには上記のような原理があり、それに基づいて2016シーズンの4位、2017シーズンのJ3優勝、2018シーズンのJ2ライセンス取得といった右上がりの成長を遂げてきた。フロントも、それに呼応して今シーズンの編成に取り組んだはずだ。この点で、チームがより力を発揮したのが当初想定していたものではなく、かつて間瀬監督が取り入れたシステムによる戦い方だったことは興味深い。

「奇しくも、それこそが『秋田らしさ』だったということですよね。それを私自身も、クラブも気付かないといけなかった」と間瀬監督。「私がいない1年半の期間に秋田がJ3で優勝した。そして結局またこのやり方でチームに火が付いたという意味では、これこそが秋田のサッカーであり、もしくはこれこそが私自身のサッカーだということを、みんなで再確認してるんじゃないかと思います」と述懐する。

山田は「『たられば』ですけど、このプレーを最初のほうからやれていればとは思いました」としながら、前半戦の不調については「一つひとつズレが生じて起こった結果。これを変えたらよかったとか、そんな決定的なことはなかったと思う。最初からいまのシステムをやっていても、選手がやることをはっきりしていなければ、そんなにうまくいっていないだろうし。チームと一緒に選手も成長したのかな」とサッカーの複雑さに思いを巡らせた。

秋田生え抜きの前山恭平は、プロ10年目の最終節に臨む。「毎年この時期は、次につながる試合をしなければいけないと思っていて。来シーズン監督は変わりますけど、変わらないものは秋田の中にある。僕たちはこういう思いを持ってやっているんだということを、見に来てくれる方、新しくチームに加入する選手に向けて示す必要がある」

ホームで迎える最終戦。前山が示そうとするのはチームに根付いたものであり、間瀬監督がもたらしたアグレッシブな「秋田らしさ」だ。

文:竹内松裕(秋田担当)


明治安田生命J3リーグ 第34節
12月8日(日)13:00KO ソユスタ
ブラウブリッツ秋田 vs SC相模原
ソユースタジアム(ブラウブリッツ秋田)
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